解放への志向・思想家の沈黙──フーコーと真理のゲーム──

ソシオロゴス表紙写真

収録誌:ソシオロゴス(ISSN:0285-3531)AN00165245
巻号 :第23号
頁  :125〜136頁
発行日:1999年9月9日
発行所:ソシオロゴス編集委員会

論文概要

 M.フーコーの初期の心理学の研究において、フーコーは人間の疎外からの解放というテーマをたてている。このことは、フーコーの考古学において人文諸科学が、現代における疎外の原因としての位置を保持し続けていることを意味している。しかし、これはフーコーの思想において大きな問題のを生みだしていたとも考えられる。本論文では、彼の後年の『性の歴史』の刊行における8年の空白とそこにおける思考の転回を、こうした初期フーコーから受け継がれてきた闘争の欲望の解体として説明することを試みた。そこで注目されるのは、フーコーの精神分析に対する態度である。フーコーは『狂気の歴史』において、フロイトを評価する一方でとても手厳しく取り扱い、そして『性の歴史』の刊行をはじめるとき、その著作を精神分析の考古学として位置づけた。しかし、フーコーは「精神分析の制度が演じてきた役割を告発することも可能」と言いながらそうはしなかったのだ。フーコーにおいて最晩年のみに「真理のゲーム」という語がみられることには、フーコーの自己充足と精神分析に帰依する態度を読みとることができる。本論文は、最後にこうしたフーコーの晩年を「悦ばしき回帰」として安易に歓待するフーコー研究のあり方に対して警鐘を鳴らしている。