反精神医学と家族、あるいは人間へのまなざし

現代社会理論研究7号表紙写真

収録誌:現代社会理論研究 (ISSN:0919-7710)AN10474767
巻号 :第8号
頁  :65〜80頁
発行日:1998年11月15日
発行所:現代社会理論研究会 発売: 人間の科学社

論文概要

 1960〜70年代にかけて日本を含む西側諸国の精神医学界で同時多発的に起こった精神病院の「解放」、それを支えた反精神医学の思想は、どのような社会知の歴史を表現しているのか。本論文は、このような課題のもとに、反精神医学なる語を生み出しその一大中心地であったイギリスのそれを中心にして検討したものである。本論文は、まずR.D.レインの反精神医学の人間学としての系譜が、実存哲学や現象学だけでなく、精神医学を対人関係論として置き直した新フロイト派のH.S.サリヴァンの影響下にあったことを確認する。こうした系譜の下で、イギリスの反精神医学の提唱者たちが、家族研究を出発点としたことは注目に値する。だが彼らはその研究が分裂病の家族因を追求したものであることを否定して、「人民の解放」を目指す「解放の弁証法」を志向するようになる。こうして成立する反精神医学は、はじめから大きな否定性が刻印されている。それは、反精神医学が、到達されるべき非精神医学を先取りにする以上、それはいかなる形態の精神医学であってもならないことである。こうしたことがらは、F.ガタリが反精神医学の臨床的実践における家族主義への回帰に見て取ったところであるのだが、重要なことはこうした反精神医学のオイディプスにあるのではない。むしろわれわれが注目しなければならないのは、こうした反精神医学に示される社会知の極点のもつ批判精神であり、精神医療の倫理である。

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