20世紀精神医学の経験――分裂病と精神療法をめぐって――

現代社会理論研究7号表紙写真

収録誌:現代社会理論研究 (ISSN:0919-7710)AN10474767
巻号 :第7号
頁  :187〜202頁
発行日:1997年11月1日
発行所:現代社会理論研究会 発売: 人間の科学社

論文概要

 20世紀の精神医学を代表する精神病として挙げることができる精神分裂病は、精神医学にとどまらない人間観と社会知の変化を象徴している。今世紀、精神医学における分裂病観は、「治らない病」から「治る病」へと変化した。この変化は、精神医学における患者の身体に対するまなざしの変化とともに、精神療法に象徴される治療者−患者間の人間関係への着目が伴っている。だが、「治らない病」から「治る病」への連続はまた、ひとつの大きな断絶の所在でもある。精神医学において、治療者−患者間の人間関係への着目は、「治らない病」としての分裂病に対して、「治る病」としての分裂病を先取りし、正常な人間として分裂病者を置き直していなければならない。けれども、それはまた人間を作り出し、より巧妙に〈ひと〉を差別することの出発点ではなかったか。もしそうであるとすれば、精神医学の世界における分裂病観の変化や精神病院の「解放」は、精神医学の世界にとどまらないことがらであるはずだ。20世紀精神医学の経験は、20世紀の社会知全体がもってきた人間主義の問題点を浮き彫りにしているのである。

日本社会学会大会報告ヴァージョン